story last.........
もし願いが1つ叶うのなら
少し前に、あいつの話を母さんにした事がある。
母さんは珍しく無言で、真剣な顔をして聞いてくれていた。
途中、飲み物を飲んだり、合間に用事で出かけたりしていたから、どのくらいの間を語っていたのかわからない。
とりあえず、とても長い間あいつの事を話していたことは確かだ。
ただ静かに見つめ返してきていた母さんは、話が終わったときに問いてきた。
「ハヤトにとって……その子は何?」
答えを求めるわけではなく、ただ尋ねてきただけだった。
その言葉を言うと、母さんはいつもの母さんに戻っていた。
リモコンを片手にとって、テレビをつけるとバラエティー番組を楽しみだした。
俺のとってあいつは―――――。
答えが出ないまま幾日か過ぎている。
すでに、あいつに関しての嫌悪感は微塵も無い。
けれど、尊敬しているわけでもない。
先輩を思う気持ちとは全然違うものだから。
友達とも言えない。
ただ
気になって、会いたくて………………どうしようもない。
徐々にスピードを増して上昇して行くこの気持ち。
この気持ちをなんと言おう。
ため息をついて、それから考えるのを止めた。
先程から思考がぐるぐる回るばかりで進展がないのだ。
その代わり、先輩に相談することにした。
きっと先輩の事だから、明確には答えてくれないだろうけど、ヒントはくれそうだから。
もしわからなくても、アドバイスはくれそう。
校門で先輩を待って、1時間ちょっと。
まだ先輩は現れず、アンニュイと暇つぶしに校庭を眺めていた。
校門は、少し丘のようになったようなところにあるから校庭を一望できた。
校庭では野球部とサッカー部と一緒に陸上部が、陸上好きな顧問を中心に熱心に活動している。
見つかったら………また走らされそうだな。そう思い校庭からは見えにくい位置に移動する。
けれど、変わらず校庭を眺めていた。
そのうち物思いに拭ける。
知らないうちに、気分が高揚する。
知らないうちに、気分が落ち込む。
無意識のうちにここ数日の繰り返し。
「今日も………来ないのかな。」
「誰が来ないって?」
肩を叩かれた。
大きく、勢いよく振り向いた。
そこには、見慣れていた昔とは少し変わった先輩の姿。
一瞬あいつかと思ってしまった自分に嫌気がさす。
そんなこと、あるはず無いのに……。
「先輩ですか…。」
「その反応は何だよ。俺じゃ悪いか?」
「そんなこと、ないですけど。」
先輩はブランクを感じさせずに接してきた。
久しぶりに会うというのに、違和感を感じない。変わらない。
前のように頭に手を乗せて俺の顔を覗きこむ。
目と目を合わせて、……数秒。
「あーれーーーまぁ、お?お!?」
変な声を出して、さらにマジマジト見られる。
今度は角度を変えて、もう1回。
「………どうしたんですか?」
流石に嫌になって聞いた。
先輩は少々笑顔になって「いや、何でもねぇ。」と言った。
今だにこの行動が分からない。そんなに近付かなくとも分かると思うのにな。
しかも、なんだか恥ずかしくなったから「変な顔。」って言った。
すると先輩は本当に変な顔になる。
とりあえず、そのことは横に置いておくことにする。
そんなことよりも本題を切り出してしまいたい。あいつのこと。
自分にしては珍しくドキドキとした。
「あの、先輩……。」と声を出しかけて
きりだそうとして、先輩に先を越される。
「そうそう実はな……。」
肩すかしをくらって、仕方なく先に話を聞くことにした。
一方先輩はウキウキとしながら語りだす。
今も例の丼のお店で楽しく働いている事。
それで、例のあの人が食べに来た事。
ちょっと事件が起こって、知り合いになった事。
やっぱり中身も可愛い人だったとか、一通りの事を、あの人を混ぜいれて話していった。
そして最後に、この後に約束をしているから、一緒に会いにいって欲しいとの事になった。
あいづちを打ち、聞き続けている間
頭の中は、あいつのことばかり。
「良いですよ、一緒に行きます。……それより先輩。」
聞いて欲しい事ばかり。相談したい。
是非先輩の意見を聞きたいのです。
頭に花が飛んだような態度を抑えて先輩は話を聞く態勢に入ってくれた。
今度こそ尋ねてみよう。
叶わない。
叶わない。
そして再び。
俺が話し始めた時に、上手い事邪魔が入る。
たった数秒の出来事。
結果だけを言うのなら、先輩が前方へ前のめりに倒されたと言う事。
たった数秒に起こった事に
驚きと、高揚していく気持ち。
この気持ちをなんと言おう。
説明をするのならば
あの人との待ち合わせ場所へ向かうため、立ち話ではなく歩き話になった時。
「先輩と会ってなかった間に、変な奴と遭遇したんです。」と、あいつの話をし始めた。
そんな時に、乱入者が現れた。
後方から全速疾走したまま、乱入者は先輩に目掛けて抱きつきタックルを繰り出した。
「友を置いてくなんて、ひでぇじゃないかよ!!!そりゃあ、掃除とか補習とかあったけどよ。くそー、俺もつれてけ、おバカリュータ!!」
馬鹿みたいに明るい水色の髪を持つ青年が、先輩にへと抱きついていたんだ。
信じられないほど、目を離せないでいる。
人違いなはずがない。
こんな際立った髪色は、1人を除いて見た事がない。
何でこんなところに……こんな所に。
居るのが、信じられなかった。
「さ、サイバァ!!?」
気がつけば叫んでいた。
驚きと共に高揚していく気持ち。
この気持ちをなんと言おう。
「のん、のん。『サイバァ』だけど『サイバー』。ちょ――っと違うぜ……ってハヤトじゃん。うわーーー!元気にしてたかよ? Are you fine ?」
「え、あ、元気だけどさ、何で居るんだよ。」
「……お前もひでぇなぁ。俺、こいつとダチ。OK?……っとあ!」
倒されていた先輩が、上に乗っていたサイバーを無視して起き上がって、制服に満遍なくついた小石や砂を叩き落とし始めた。
おでこや、ひじを擦り剥いている。軽く血がにじんでいた。
「ひでぇのはお前だ、サイバー。ったく、見ろよ擦り剥いちまっただろ。」
「………舐めときゃ直るぜ!!それより俺も一緒に行っても良いだろー。1回はお前の想い人見てみたいんだよねぇ。」
うるさいほど明るくて、こいつも相変わらずなまま。
俺は、多少頭をかすめていた事故やら病気やらの思いが外れて、安堵していた。
くったくがないほど明るいあいつ。
何か声をかけようと思い、胸がドキドキとした。
言葉を出そうとして………どうしてだか言葉が出なかった。
こんな事は初めてだ。どうかしている。
この気持ちを何と言おう。
「やりぃ!!I am winner☆ 俺も一緒に行くぜ!そんなわけで、よろしくハヤト!!ってかさ、今更だけど何で二人一緒にいるわけ、友達かなんか?」
「中学ん時の先輩、後輩。俺は二人が知り合いの方が不思議でならないんだけど、いつ知りあったんだよ。」
「秘密。これは色々とあるのだよ。良いかいリュータ君。」
「や、わかんねえから。」
戸惑っている間にも、次々と会話が進んでいく。
変わらず動悸が速く脈打っていた。
今までに在ったようなジッとして居られない衝動とは、また違う衝動。
「ハヤトも何か言えよー。」
あいつが近付いてきて、さらに鼓動は増していく。
深く、深く、奥深くへ。
答えは既に胸の奥に。
宝物見つけた。
気がつけば、サイバーを抱きしめていた。
ぎゅーーーっと抱きしめて、温もりを感じる。
温かく、溢れ出すもの。
十分に感じ取ってから離れてみると、サイバーも先輩も目が点になっていた。
そんなことは気にしない。
「さっさと、その先輩の思い人の所に行きましょうよ。」
俺の一言で、二人は我に帰り、先輩を先頭に歩き出す。
腑に落ちないような態度の先輩。
もうすでに気にしないで、同行出来ることに頭には花を咲かせてウキウキとしているサイバー。
そんな二人の姿を見てから
ココロを躍らせつつ、先輩のそばによってから言った。
ずいぶん前の約束。
「好きな人出来ましたよ。」
さっきの事を気にしていたのか、しばらく間が空いた。
その間も、わくわくとしながら待つ。
「……本当か?!誰よ、それ可愛い子?」
『可愛い』などと聞いて、どうするのだろう。
かわいい……のかは、まだよく分からなかったが、先輩が好きになる確率はゼロに等しい人。
ココロ躍らせながら
「この人。」
と、指をさした。
さした先には、スキップに近い歩き方をしているあいつ。
サイバー。
再び先輩の目が点になる。
「……本気でか?」
「本気です。」
話の聞こえていなかったサイバーは、指をさされていることに気がつき「何よ?」と尋ねてきた。
「何でもねえよ。」と、しばし沈黙していた先輩が答えて、多少戸惑ってはいたが、妙に納得していた。
何も言わない先輩に感謝をして、今度はサイバーへと駆けよった。
こころ踊る。
「あのさぁ。」
さっきから言い忘れていた事があります。
この瞬間を切望していました。
奥底に隠していた物を出させてくれた。
止まろうとしていた俺を、本当の意味で走らさせてくれました。
見つけたのは確かな光。
胸の中で光放つ。
サイバー
サイバー、
ありがとう。
FIN
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20050207 加筆修正20061030