先輩の走る姿に感動したんだと思う。
感動した理由は明確に分からない。

けれど、きっと………











story2............





入部当初に俺は、あのリュータと呼ばれた先輩に気に入られた。
理由その1は、「顔が可愛いかったから。」らしい。
ただの節操なし……?っと思ったが、どうやら違うらしい。
他にも理由があるらしいので、問いかけてみても
その2からは、あれから1年たった今でも教えてはくれない。
部活で会う度に、身長が顔1つ分くらい違うせいか、頭にポンっと手を置かれ、そのあと顔を除きこまれる。

「変化なしか。」

「何がですか?」


1年間、毎日続くやりとり。

毎回「いんや〜。」と言われ、はぐらかされる。
この行動がいまだに理解できない。


リュータ先輩は、ハッキリ言って変わった人だった。
どう変わった人なのか、……そうだな。
先陣をきって部活内で悪ふざけをしてたと思い気や、急に物思いにふけ込み始める。
けっして阿呆な顔をしてでなく、その顔がさまになっているのは凄いと内心感心した。
そして、何の前触れもなく話をきりだす。


「今日の雲すげぇなぁー。」




うん、今日もそう。
部活前の準備体操で、二人組みになる。
先輩はいつも俺を誘ってくれるので、一緒に組むのが既に決まったこと。
組んで体操しながら、今日の練習メニューを話していたはず。
急に雲の話題になった。

雲が凄いっと言うから、一緒に見上げて見た。
風が強くて、髪が散らかる。
邪魔な髪を手で押さえて雲を見上げてみた。
結構な勢いで、雲は変化しながら空の中を流されている。
それは天気もそんなに悪くない中での、いつもと変わらない雲の姿。
変わらないと言っても、雲はひとつひとつ形が違うから、その日にとって特に意識するような雲でははなかったって事。
意識するような雲でもないのに、何が凄いのだろう。


「……?」
「雲が全部丼に見える。あれはマグロで、そのとなりは天丼で、んで上の方はピチ丼。で、もってーーーー・・・」


もう1度、空を見上げてみた。
雲は雲で、ひたすら雲でしかない。
俺には、どれもこれも雲以外何にも見えない。


あれが、先輩には色々な丼に見えるらしい。






「先輩、高校生になったら丼を扱ってる店で働いたらどうですか?」
「多分そうするわ。」


けらけらと気兼ねなしに笑う。
本当遠慮なしに笑うもんだから、一緒に笑ってやった。
準備体操も終了し、体がほぐれて走る準備万端。

「さーて、走りに行きますか。」



対抗試合は、間近だ。3年生である先輩の引退は近い。
あぁ、もうすぐ先輩の走りが見れなくなるのか…。

そんな事を考えてたら、先輩がこっちを向いた。
だからいつも通り笑って「何ですか?」って聞いた。


「…………。」

ボソっと一言喋った気がした。
けれど、声の音を風の音が阻む。




「え……、なんて言ったんですか?もしかして、変な顔してましたか!?厳つい顔でもしてたかなぁ……こんな感じに眉間にシワよせてたり…。」

「んな事してなかったよ。」

苦笑されながら額をぺしっと叩かれた。
「何でもねーよ。」と、先輩は言い放つ。


「リュータ!!」
他の部活仲間に呼ばれる。
遠くの方に見える、人影が手を振り、先輩も手を振り返す。すると、
「早く来ないと、罰ゲームだぞ!!あと5びょーう!!」
っと、笑いを交えながら、カウントし始めた。
短く返事を返して、焦ることなく「戻ろうぜ。」と言って、背中をむけてゆっくり歩き始める。
そして姿が豆粒のようになった。


俺はまだ、その場に立っていた。


先輩は鋭い人だと
そしてやさしい人だと。
離れて見ていると、この人は疎遠な人だと、とても思う。


本当・・・・・・。




我に返り、駆け足で校庭に向かう。
遅れると先輩は、うるさいから。


















すみません、先ほどの声。本当は聞こえていました。
でも、無視しました。





無理な話だから。





きっと……俺は
目的のない毎日の中で、目的を求めて全力で走ってる。
そんな先輩を尊敬し。憧れました。







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20040905   加筆修正2006.03.01