もう、いつ誰に質問したのかさえ覚えていないけれど
どうして母さんと父さんは結婚したのかって聞いたんだ。

返事は1つ。
『愛し合ったから。』






story4........






何度も何度も、同じ事の繰り返し。

「ごめんなさい。」

放課後の学校、部活前に呼び出されて、
相手は名前も知らない女の子。
顔を真っ赤にして「付き合って下さい!」と言ってきた。

これで中学校へ入ってから何度目だろうかと思う。
何度目かの拒絶の言葉を返す。
それで終わればいいのだけど。

「好きなんです。付き合って下さい。」
それでも諦めない子がいる。




正直言って……


「こんな俺の何処が好きなの?」
早くこの場を終わらせたい。けれど聞くだけ聞いてみた。
単純な好奇心が少々と、確認が少々。

彼女は急に瞳を輝かせて
思い出すような、酔いしれたように語りだす。
「ハヤト君は……とっても明るいじゃない?いつもクラスの中心にいて、いつも見ると笑ってるの。その笑顔が好き。」
そして間を置き、照れながら一言。
「それに、とてもやさしいもの。」





やっぱり





「ごめんなさい、やっぱり付き合えません。」
女の子をそのままに。
去った。

どこまでも皆騙されたまま。
俺はそんなやつじゃないよ。


とても……



そう







「もったいねー。せっかく可愛いのに。」
部活に戻ろうと校庭の方へ歩いていたら、上の方から声が降ってきた。
声質で判断が付くから見なくてもわかる。
声のした方に向けて、話しかけた。

「リュータ先輩、覗きですかー!?趣味悪いですよ?」
「いや、偶然だって。俺って硬派よ?そんな野暮なことはいたしません!」
雰囲気がどことなく笑ってる。気がする。

「……どこらへんが硬派なんですか。」
「んと、ここらへんかな。」と、指をさしている。
そのさしている指の方向は、頭だか、胸だかハッキリしない。

……何が硬派なのか全然わかりませんって。


木の葉が舞うように次々に落ちてくる。
足下には結構な数が散らばっていて、
茶色く色彩を変えた葉は、踏めばパリッと音をたてて粉々になった。
木も、葉が無くなりすぎてきて殺風景になってきている。
今はそんな季節。


「部活に覗きにこないんですか?」

季節はもう秋で。
受験シーズンバリバリ。
先輩も3年生で、それは例外でない、部活は引退したが勉強が忙しいだろう。
けれど聞いて見た。なんとなく。



俺の質問の後に、先輩が窓の縁に両腕を乗せて、そこに顔を埋めてよりかかっている。
どうやら、考えているみたいだ。
返事が帰ってくるのを期待して、その場で待って見る。
先ほどの彼女が、先輩とは違う階のろうかを歩いていたのが目に見えた。
近くには誰か友人が居て、頭を撫でられて諭されているような、慰められているような、そんな感じ。
多少胸のあたりがつかえた。仕方ないとはいえ、悪いことをしたのだから。
………まだ先輩の返事がこないから、彼女達から先輩の方へと目を移す。
まだ先輩は腕の中に顔を埋めたまま。
結構長い、寝てるのかな………部活始まっちゃうよ。
あ、顔を上げた。

「下で待ってろ。」


どうやら来るらしい。
昇降口にまわって、出入口付近の壁によりかかって、先輩か来るのを待つ。

「じゃあな、ハヤト!!」

「ハヤト君、また明日ね!!」

「部活頑張れよ、ハヤト!」

待っている間に次々に知り合いが出てきて、目が合う。
「バイバイ。」「じゃあ、明日。」
それぞれ笑いながら手を降って見送った。
それがやけに長く感じる。

そんな事をしてたら、先輩が鞄を手に持って出てきた。
頭に手を乗せられる。
そして顔を覗き込まれる。


「変化なし?・・・・ってか悪化してるか?」
「何がですか??」

ぽりぽり先輩は頭をかいた。
数秒ほど腕を組んで悩んでいる姿を眺めていた。
先輩が口が開きかける。
ついに答えてくれる気になったのかな・・・?

しかし、空けた口を再び閉じてた。
その次には、「いんや〜、やっぱなんでもね〜。」っと、やっぱりはぐらかされた。
深く気になっているわけでもないのでそのまま保留。


「俺は走らないで、見てるだけよ?」
しっかりと履けていなかったのか、靴を地面にトントンとさせながらせ先輩は言った。

この後に、どうなるか分かっていたから、
「それでも良いですよ。」

そう答えた。






先輩が走る。

その後ろを全速力で先生が走る。

「こらーーー!!!!リュータ、お前一緒に走ってけーー!!!!!!」

「ひーー!!!!もう走ってますってーー!!!!!!」
そして先輩が追いかけられてまた早く走る。


「やっぱ良い足してんじゃねえか!!引退なんかしてんじゃねぇよーー!!えーー!!!?
あ前ら、出合え出合え!!リュータ取っ捕まえんぞー!!!!!!」

先生のかけ声で部員総勢で逆鬼ごっこ。

端の方で見ていたはずの先輩は先生に見つかると追いかけられた。
結局、その後に部活の後輩や先生に捕まり、一緒に走らさせられた。
それは、先輩が男女関係なく後輩に人気があり。
陸上部の顧問の先生のお気に入りだったのだから、当たり前だろう。






日は大分沈んで、日にオレンジ色が浅く残る中をトボトボ歩く。


「あーぁ、走るつもりなかったんだけどな…。」
学ランは鞄と一緒に脇に挟んで、シャツの胸ぐらを掴んで前後にパタパタとさせている。
頬には今に垂れそうな汗。
凄い暑そう。
「しょうがないですよ。」
苦笑しながら言った。

総勢30数人。
その人数から逃げられた方が凄い。

「お前、一人休んでただろ。」
ちらっと、こちらを見られる。
「あ、バレました?」
「一人だけ姿見なかった。んで座って休憩してるのを追いかけられてる途中に目撃した。隠れて休むんならもうちょい見つからないとこにしないとなー。」
にーーっとイタズラッコみたいな顔をしながら話している。
あらら、見られてたか。
「あの中で目敏いですねー、先輩。」
「そうでもねぇよ。」
ははははと笑い合う。で、1人で休んでんなよと叱咤が来る。
それを軽くかわす。

こう言うのは結構楽しい。
わいわい二人で会話をして、歩いていた。分かれ道に着く。
ここで先輩、と俺の家が別々の方向になる。
ここで、さようならだ。

「じゃ俺こっち。」っと先輩は指をさす。




あれ?



変だな。確か……。


先輩の指差す方向がいつもと違うので疑問に思った。
たしか…
「先輩の家って逆方向じゃ…?」


先輩はキョロキョロと辺りを一回見回した。
その後「実はバイト始めたんだわ」と、軽く言い放つ。

受験生でしょ、先輩。
その前に中学生ですよ、先輩。

「とっても美味しい丼の店でさぁ。比致政ってとこ。思わずバイトしたいって言ったらオッケイだってさ」

思わずって………
それで了承するその店って……




呆れそうになって、我に返る。

先輩は、本当嬉しそうにしている。
ここで水をさすのは悪い。

「良かったですね。」
「あぁ♪凄い嬉しい。」
ルンルンとしながら先輩は話す。

「それにそこの近くで、ちょっと気になる人見てさ。」


その後、先輩は急に頬をカリカリと掻いたと思い気や手をぶんぶんとさせたり。
目線を少々上に向けて、その後照れて笑ったりと。
それはそれは見てて気持ち悪いほど、とても嬉しそうにしていた。

「まぁ、なんていうかさ。凄んげー、可愛い人が居たんだよ。」

落ち着きを取り戻して、そう言った。





「それって、…一目募れってやつですか?」

「そうかな、ああ…うん。そうかもなー。……可愛い人に弱いっぽいわ、俺。」
恋心多い学生。
恋心からくる悩みはつきないだろう。

そのあとも、その『可愛い人』の話は続く。
比致政の反対の道路にいたんだ。
バス待ってた。
猫なんかと一緒にいてさーー。
ずーっとバス来るまでニコニコ笑って一緒に遊んでんの。
なんつーか、ピンってきたよ、俺。


「でも、声も何もかけてないんだよなーーー。俺が一方的に見ただけ。」
腕を力なく垂らして、うなだれる先輩は、本気でへこんでいた。
しょんぼり。
そんな言葉が合う気がする。

「今度会ったら声かければ良いじゃないですか。」
少々呆れながら言ってみた。
そうしたら先輩は「そうだな。」って気合いを入れて受け取ってくれた。
目に決心の色が見える。
多分実行するだろう。

「っと、時間やばそうだから俺行くわ。じゃあな、ハヤトー。お前の恋話とか今度聞かせてくれよな!!」
走って去りながらも先輩は話続ける。
前から自転車とかが来たらぶつかりそうで危ない。


「・・・・いつか話ますよ!!」

好きな人が出来たらなら
恋が出来たのなら。


でも




それが信じることが出来ないけれど。
いつかきっと。


「………必ず先輩に話しますからー!!!!!!」

話をしてくれた先輩に1番に話します。



もう姿が豆粒ほどにしかみえない。
けれど、その声が確かに届いたと思う。
手を上げて降っていたから。







切ないほどに、その感情は浮上しない。
沈没したまま、凍りついて、上がって来ようとはしないまま。





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20040907  加筆修正20060305