story11.........









消えてしまいたいと思った。
先に希望なんて持てないし、ましてや切望するものはないよ。




「あんた誰。」





ひんやりと冷たいコンクリートは火照った体には気持ち良かった。
たしかな堅さのあるその上に、大の字に転げたまま、予想だにしない場所から出現した人物と目線だけ合わせた。
頬まで伸びた水色の髪、はばの大きめな群青に近いサングラスを暗がりの中かけて、一言では説明できない服を着ていた。
服で言えることは、そいつの服のセンスを疑ってしまうと言うことだ。
そしてホッピングのような靴をはいてずっと跳ねていた。
それ全てが信じられなかった。

あいては揚々として、依然と跳ねながらニコニコしていた。
しかし俺の一言に一気に表情を変える。

「ががーん。だ、誰!?もしかして俺って知られてねえの!?
マジでえ!?すげーショックだぜ!!」


跳ねるのを止め、地団太を踏んで暴れ始めた。
そいつが手に持っている何かから光が飛び出す。


「良いかー、耳かっぽじって聞けよ?」
コホンとそいつは声を整える。



服装にしても言語からしても、行動にしても
何もかもへんてこだ、何こいつ。



「O.K?呼ばれて飛び出せの正義のヒーローとはこのサイバー様だぜ!!まだ見習いだけど立派なヒーローだかんな、そこんとこ宜しく。」
言いながらもポーズをとっている。
ポーズの最後にビシッと先ほど光を出していた物体を顔の横に構えた。
構えからしてそれは銃らしいのがうかがえる。

ボソッと「決まった。」と言う声も聞こえたが、さして気にせず、やっと俺は片手をコンクリートの地面に手を突いて起きあがる。すぐ脇に転がっていたスケボーを手に取った。
確認してみると、傷があまりついてないようで安心した。

「なぁ、聞いてっか!?正義のヒーローだぜ!!!?」

言いながらも、銃を連発させ銃口から光が飛び出していく。
光は小さな輝く粒子をまとって流れ星のように、地に落ちる方向とは逆に上っていく。幾分か流れ星より遅く、天へ天へと上る。
その飛んていく先を眺めた。天を目指して、光は姿を消す。
何度も飛び出して、その度に消えて、発射される度に眺めた。

「Do you understand ?」

「……。」


何かに向かうわけでもなく光は走っていく。
いくつも

「……なぁ、おい!!」




そこには迷いなんか感じさせずに走り抜けていく。
いくつもいくつも





「聞いてんの!!?」





迷いなんて言葉さえ知らないというように
いくつもいくつもいくつも

「・・・・・。」





「おいってば!!」








「……そんなのどうでも良いよ、俺にかまわないで…。」
俺が返事を返したのは声を掛けられて何度目か
光は綺麗で、いつまでも眺めていたかったけれど、そいつの声は耳障りだった。
今も俺の「かまうな。」と言う発言に対して「かちーん。ヒーローを何でも良いだとぉ。ってか何でだよ。」っと何故だ何故だと問いかけて来てくる。


「なぁ、なんで?」
「なんでさ?」
「聞こえてますかー!?俺に教えてっ!!」
「……なんでだよー?」「あのさぁー……」
違う言い方で何度も何度も、時には肩を軽くたたかれながら、同じ問いをする。

「何でも良いから…どっか行け。」

極力いつも以上に自制させて言った。
立てないほどに疲れていたって、流れ星みたいなものを眺めていたくたって、未だに心の枷は外れれたまま。暴走したまま。
誰であろうと、口からは毒々しい言葉を出してしまいそう。


これ以上。
これ以降。


「俺に話しかけるな、触るな、問いかけるな。……関わるな。」

すでになけなしの思いやりで忠告した。
あいては打ち続けていた銃の指を止めてキョトンとする。

それだけを言って、また俺は横になった。

もしなれるなら今すぐ風化して、この夜でもなま暖かい風の中にちりたい。
それか瞬時に、この体が改築されるのなら改築されて全く違うものになってしまいたい。
何でも良いから、自分以外に。まぶたを閉じたら、数秒後にどちらかが起きる。

そんな空想を持って、まぶたを落とした。




消えて。




消えてしまって。







「……無理。I can't do it.だって俺様ヒーローだぜ?」

そして数秒もしないうちに、その言葉に空想の中から現実に戻される。
額にコツンと硬いものを感じ、目を再度開けた。
あいつがあのヘンテコな銃を突きつけていた。
銃を一別してあいつを見上げた。

ヘンテコなサングラスの向こうにあるぱずの目を見つめた。暗くてどんな目つきをしてるのかなんて見えやしない。
唯一、鼻以外で顔の一部で見える口は真横に結ばれていて表情なんて分からなかった。




「撃てば?」

焦る気持ちがなければ恐怖もない。
撃つなら撃てばいい。
こんなヘンテコな銃でも死ぬかもしれないだろう、願ったりだ。

母さん達は泣くかな、それとも激怒するかな。
最近は心配ばかりをかけているから、せいせいしたとでも思うかな。











まぁ、良いや。

変な奴の、変な銃に撃たれて、亡くなる。
他は知らない、その事実だけで良い。楽になれることは変わらない。


「バイバイ。」


引き金を持った指先が動いた。
ゆっくりと瞳を閉じて衝撃を待った。


カチッと音がして
引き金を引く音だけが聞こえてきた。
衝撃は来ない。

カチッ………カチッっと再び音だけが聞こえた。何が起きているのか、俺にはわからない。
ただただ衝撃を待った。

「あれ?」
変な奴が焦った声を出した。
その後には、やはり引き金を引く音だけ。

その間も銃口を当てられたまま、変わらず横になったまま待った。
その間もひたすら音のみが聞こえる。
カチッという音の回数が増すにつれて、だんだんと撃たれるのを待つのがバカらしくなってきた。


「……早くしろよ!」
「ちょっと待てって!…アーレーー?」

ペシペシと銃を叩いて再び引き金を何度も引いている。
先ほど騒がしいほどに放出されていた光は1発も出てこない。今はただの子供のおもちゃのように全く反応がない。



「……壊れた。」


涙声で言う。
先とは全く違う、弱々しい声だ。
けれど、得体の知れない相手の事情など考慮する気はなかった。
覚悟を決めていた。それをあっさりと捨てられた気分だ。最悪だ。

暴走しかけた心がフツフツと、底から吹き出してくる。


「はぁぁ!?壊れた?ふざけんなよ!そんな変梃な服着て、奇妙な言動の上に性格は間抜け!?何あんた。」

「ひ、ヒーローだ!」

涙声で、それでも胸を張って発言していた。
無性に蹴りを入れてやりたい。


「あ、そう、それだけ。それだけか。じゃあ間抜けなヒーローさん、さようなら。どこかに消えて。」

「さっきも言ったけどな、無理!ヒーローだからムリ!」
一瞬ひるむも負けまいと、しゃがみこんで俺の顔をのぞきこんで言ってきた。一生懸命に言ってきた。
一瞬瞳の色が見えた気がした。
けれど今の俺には、そんなもの気にはならないし、反論はこの気持ちにさらに拍車をかける要因にしかならない。

「無理な理由が不明瞭、あんたがヒーローだっていう理屈も全く理解不能。」
「なぁ!なんだよそれ!!」
「何、今すぐあんたは具体的に簡潔に理解しやすく説明できるの?出来るんなら言ってみなよ、聞いてやるからさ。」

そいつは口だまる。



唇を少々振るわせ、口を数回パクパクとさせて
勢いよく立ち上がって背中を向けた。
袖で顔をぬぐっているのが分かる。

「ほら、出来ないじゃないか。」
「ひ、ヒーローは…なぁー。ピンチな時は出直し…て、そんで必ず悪を倒すんだぜ!!ぜ、…ったい更正してみせるからな!覚えとけよなーー!」

そのまま跳ねながら思っていたよりも早い速さでこの場から離れてく。
途中、止まって「ちなみに俺はおまえじゃなくてサイバー!!これも覚えとけ!」なんて言って、また去っていく。


姿が見えなくなって、しばらくしたらバネのような音が聞こえなくなった。

また静寂としはじめる。





その場から立ち上がった。

疲れもあの気持ちさえも忘れてしまっていた。
腹立ちばかりが残る。

あんな弱いヒーロー聞いたこともない。




「サイバー?……………あんなやつ大嫌いだ。」










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20041027  加筆修正20060629